近年、クライアント企業のインハウスPRチーム強化や、AI/SaaS型PRツールの普及が進み、「プレスリリースは自社で出せるし、SNS投稿も自動化できる」「わざわざ外部に委託する必要は?」という声が高まっています。今回、PR会社視点で、これから存在し続ける意味、提供すべき価値について探ります。
「PRって、もう自社でできるよね?」
近年、大手企業を中心に、自社内でプレスリリースの作成・配信、メディアリレーションズ、SNS運用をすべて内製化しようという動きが加速しています。その背景には、AIやSaaS型のPRツールが急速に普及し、プレスリリースの自動生成や配信効果のリアルタイム分析が容易になったことがあります。
こうしたインハウスPRチームの体制構築強化と技術的効率化の進展を前提にすると、いわゆる従来型である“代理店”といわれるPR会社にとって「外部リソースを活用する価値は何か」「PR会社としてどのような差別化要素を提供すべきか」を改めて明確化する必要があります。
インハウス×エージェンシーのハイブリッド運用の実態
近年、多くの企業では日常的なプレスリリース配信やメディアリストの管理といったオペレーション業務を自社のインハウスPRチームに内製化しつつあります。しかし、ブランドの核となるストーリー設計や大規模キャンペーンの立案、さらに万が一の事態に備えた危機管理対応など、高度な専門性や幅広いネットワークが求められる領域については、外部のPR会社に委ねるハイブリッド運用が現在でも主流です。社内外のリソースを役割に応じて最適に使い分けることで、“効率”と“戦略性”の両立を図るのが現状です。
また、クライアント企業の多くは「自社のPR担当者は事業理解に優れているが、業界横断的なネットワークや最新ノウハウは外部パートナーに依存したい」というニーズを抱えています。加えて、従来の固定フィー型に加え、成果に応じた報酬モデルや手数料体系の柔軟化を求める声も増加しており、PR会社には単なる業務代行ではない、リスクを分かち合うパートナーシップが期待されています。
スタートアップ/地域企業に求められる“擬似インハウス”の役割
大手企業のハイブリッド運用モデルでは、インハウスチームと外部PR会社がそれぞれ得意領域を分担し、「効率×戦略性」の両立を実現しています。しかし、スタートアップや地域密着型の中小企業には、そもそも自走できるインハウスPR体制を整えるリソースがありません。こうしたクライアントに対してこそ、PR会社は“戦略パートナー”という役割を超え、むしろ“擬似インハウス”としての役割を担う必要があります。
具体的には、以下のような支援が求められます。
- PR戦略の立ち上げから伴走
予算・人員・経験が限られた状態から、事業ステージに応じたPRゴールの設定、メッセージ開発、メディア接点の設計まで、ゼロから計画し、実行・検証を繰り返す。 - ナレッジの移転とチームビルディング
単に施策を代行するだけでなく、社内メンバーへノウハウを体系的に共有。PRマニュアルの作成や、ワークショップを通じた実務レクチャーにより、自社内のスキル底上げを図る。 - 予見と柔軟対応によるリスクマネジメント
小規模組織ほど、トラブル発生時のダメージが大きい。日常的なモニタリングから危機の芽を早期にキャッチし、迅速な対応プランを提案・実行することで、事業の深刻化を防ぐ。 - 成果報酬型モデルの提案
限られた予算を最大限有効活用するため、露出件数やリード獲得数、SNSエンゲージメントなどに応じた報酬体系を導入し、成果とコストのバランスをクライアントと共有する。
これらを通じて、スタートアップや地域企業は「自走できるPR力」を内包しつつ、成長フェーズに応じた最適解を迅速に手に入れることが可能になります。kushami社としては、こうした“ゼロイチ伴走”型の支援を通じて、まだPR体制が盤石でないクライアントに対し、まさにインハウス以上の信頼性と実効力を提供していきたいと考えています。
今後のPRパーソンに必要な3大スキル
今後のPRパーソンに求められる3大スキルは、以下の通りであると考えています。
- 戦略設計力
スタートアップや地域企業の事業ステージ・リソースを踏まえ、「誰に何をいつ伝えるか」をフェーズ別に最適化して設計できる力。ゼロからゴール設定→施策立案→効果検証までのPDCAサイクルを高速で回し、自走可能なPR体制を構築します。 - ナレッジ移転力
単なる外注代行にとどまらず、社内メンバーへの体系的なノウハウ共有を担う力。ドキュメント化、ワークショップ、1on1レクチャーなどを通じて、クライアント内部にPRスキルを底上げし、中長期的に自社運用できる体制を育てます。 - 先見性と柔軟対応力
日常的なモニタリングでリスク兆候を早期に察知し、炎上やネガティブ報道の芽を潰す“先回り対応”を実行できる力。小規模組織ほど致命傷になり得るトラブルを予見し、迅速かつ柔軟に対策プランを提案・実行します。
kushami社は、大手企業のハイブリッド運用モデルの単なる真似で終わらせるのではなく、スタートアップや地域企業に対して「社内PR担当者以上」のコミットメントで伴走し、戦略設計からナレッジ移転、リスクマネジメントまでを一気通貫で支援していきたいと考えています。これにより、クライアントは限られたリソースの中でも自走可能なPR体制を築き上げ、事業フェーズに最適化された持続的成長を実現できるのです。