「それ、それ!まさに欲しかったやつ!」
そんなふうに、誰かの提案に触れてはじめて、自分の“欲しかったもの”に気づく瞬間があります。
たとえば、日々忙しく過ごしているビジネスパーソンが、「人と話さなくても英語を学べるアプリ」のニュースを見て、「あ、これがあったら、シャイな自分でも他人と会話をせずに英会話スキルを学べるようになるかも」と思う。けれど、数分前まではそんなことを考えてもいなかった――。
このように、人は往々にして、自分の「潜在的なニーズ」を自覚していないものです。
「ない」と思っていたものを、「ある」と示す
マーケティングの世界では、「ニーズを掘り起こす」とよく言われます。しかし、その本質は「掘り起こす」というよりも、「気づかせる」「言語化してあげる」という行為に近いのではないでしょうか。
私たちkushamiでは、PRやコミュニケーションの設計をするとき、よくこの「潜在ニーズの自覚」を意識します。
クライアントの商品やサービスの魅力を、そのまま並べるだけでは届かない。
だからこそ、「この価値は、こういう人にとって、こんなふうに刺さるのでは?」という仮説を立て、ことばや見せ方を通して“気づきの装置”をデザインするのです。
潜在ニーズを「自分ごと」に変える言語化
言語化とは、単なる説明ではありません。
「これが、あなたの役に立つんです」と広告的に押しつけるのではなく、
「これって、あなたの“あの瞬間”に必要なものかも」と、静かに差し出す。
受け手の記憶や感情を刺激し、自分自身の中に“そのニーズ”があったことを思い出させる。そんなことばには、力があります。
たとえば、冒頭の「シャイな人でもできる英会話アプリ」ですが、さらに、こんなコピーを打ち出します。
TOEIC依存の英語から脱却し、AIとの対話を通じて英会話を学ぶ
この一文に触れた人のなかには、「ああ、わたしが英語ができなかったのは、TOEICや受験のための“スコア英語=Reading重視の英語”ばっかりやっていたんだ」と、はじめて自覚する人がいるかもしれません。
「自分ごと」を「世の中ゴト」へ昇華させる
ただし、PRとして本当に社会を動かすためには、「自分ごと」でとどまってはいけません。
一人の“気づき”を、いかに“共感”に広げていくか。
そして、それが社会全体の関心や行動につながっていくか。
ここに、もうひとつの重要なフェーズがあります。
潜在ニーズの自覚(0→1)に加えて、“世の中ゴト”への昇華(1→100)。
この2つのフェーズをつなげていく設計が、PRの本質的な仕事だと私たちは考えます。
ムーブメントは、偶然ではなく意図によって生まれる。
たとえば、最初は個人の「便利だな」という感覚だったエコバッグが、
「環境への配慮」や「持続可能性」という社会的文脈の中で再定義され、
やがて法制度やライフスタイル全体に影響を与えていったように。
言語化された“気づき”を、どう社会と接続するか。
それは、商品やサービスの魅力を伝えるだけでなく、
社会の中で「意味のある存在」に育てていくプロセスでもあるのです。
PRとは、気づきと共感のデザイン
私たちがPRを通じてめざしているのは、「伝えること」ではなく「気づかせ、共感させること」です。
受け手の中に眠っている“まだ言葉になっていない思い”に、そっと光を当てる。
その光が、次の誰かを照らし、やがて「世の中ゴト」になっていく──。
それが、kushamiの考えるPRコミュニケーションです。